第23章 17歳
………!
息が止まるかと思った。
どうしよう。どうしたらいいの?
もちろん、すぐに返事しなくちゃ。出ていかなくちゃ。
でも、身動きできずにじっとしていた身体はこわばっているし、上げたままの右足はしびれている。そして今知ったけれど、のども張りついて声が咄嗟に出ない。
「出る気がないなら、こっちから行く」
「……あ…」
なんとか声が出たが、混乱していて言葉にならない。
「誰だか知らねぇが、盗み聞きとはいい度胸だよな」
リヴァイの声が静かに近づいてくる。
……違うんです…! 盗み聞きをするつもりなんかなくって…。
気持ちが焦るばかりで、どうしようもない。
やっとしびれていた右足が動いたと思ったら。
───────────────!!!
天井が見える!
私、落ちる!!!
床に衝突する激痛を覚悟して、マヤはぎゅっと目を閉じた。
───────────────???
あれ?
痛くない。
ふわっと何かに包まれた。
あたたかくて…、そしてなんだかすごく、いい匂いがする。
「大丈夫か?」
すぐ近くから聞こえてくるリヴァイ兵長の声。驚いて目を開けると、すぐそこに顔が。
バランスを崩して脚立から落ちたマヤは、ちょうどやってきたリヴァイに助けられていた。
「すみません!」
声が出たことに、ほっとする。
これで伝えられる。
「盗み聞きする気はなかったんです…。ごめんなさい…」
「それより怪我はねぇか?」
すぐ目の前で、青灰色の瞳が心配そうに揺れている。
「はい、大丈夫です」
そう答えながら、ふと疑問に思う。
あれ?
あんな高いところから落ちたはずなのに、全くどこも痛くない。
落下してすぐにリヴァイの声に驚いて目を開けたマヤは現状を認識してなかったが、たった今… 確認した。
すっぽりと全身をリヴァイに抱きかかえられていたのだ。