第23章 17歳
もともと倉庫内にいることを知られたくないがゆえに動けないでいたマヤであったが、リヴァイが放った言葉で… さらに身動きできなくなった。
“マヤは関係ねぇ” “くだらねぇこと”
その言葉が発せられた場所からは少し離れた薄暗い倉庫の奥の脚立の上。右足を上げた中途半端な姿勢でいるマヤの心臓にダイレクトに突き刺さる。
胸が痛くて、動けない。
……わかってる、そんなことは。
兵長にとって私は、全く関係のない存在なんだってこと。命を助けてもらったのも看護してもらったのも、別に特別でもなんでもない。たった今出ていけと突き放されたメラニーだって、あのとき巨人に襲われていたら助けられて付きっきりで看護されていた。
兵長にとって恋愛は、くだらないこと。告白されることは、厄介ごと。女なんて抱きたいときに抱ければいいこと。
全部全部いやって言うほど、わかっていることなのに。
あらためて突きつけられると、どうしてこんなにも鋭くて。息が止まるかと。そして、どうすればいいかも知らない。
ただ脚立の上で、決してここにいることを気づかれないように、息をひそめるだけ。
マヤがそうやって衝撃にかろうじて耐えているうちに、メラニーは黙って出ていったらしい。
扉の閉まる音が倉庫内に響いた。
あとはリヴァイ兵長が出ていってくれたなら。
マヤは息を殺して待った。
もう一度、扉の音が聞こえてくるのを。
一秒二秒三秒… 十秒二十秒三十秒…。
一向に聞こえてこない扉の音、感じられない人の気配。
……あれ? メラニーだけが出ていったと思ったのは私の勘違いだったのかしら?
兵長も一緒に倉庫から出ていったのかもしれない。
マヤがそう考えはじめたとき、その都合の良い思考は低い声に切り裂かれた。
「いるんだろ? 出てこいよ…」