第17章 壁外調査
無我夢中で巨人を斬り、マヤを村まで運んだ。意識が戻るまでの時間は果てのないように感じられて。
このまま目覚めなければと想像したときには恐怖すら感じた。
意識を取り戻してくれたときの全身の血潮が沸騰するような喜び。
今も、強く握っている両手が熱くて溶けてしまいそうで。
こんな気持ちや肌の感触は、ただの部下の一人だからではない気がする。
今までこんなにも強く、何を犠牲にしても守ってやると思ったことがあっただろうか。
目覚めないことが不安で、かたわらから離れられないなんてことがあっただろうか。
一体… 何故。
何故なんだ。何故俺は、こいつに対してこんな風になっちまう?
……きっとそれは、俺がマヤに特別な気持ちを抱いているから… なのだろうな…。
ドクン。
今まで気づいていなかった自分の気持ちに初めてまともに向き合えば、心臓が跳ねる。
マヤに対しての、特別な気持ち。
いや、気づいていなかったのではない。
恐らく気づいていたが、気づかないふりをしていた。気づきたくなかったのかもしれない。
この気持ちをどう扱ったらいいのか全然わからなくて。
ただやたらにドクンドクンと心臓が早鐘のように打ちやがって胸が苦しい。
さらさらとした長い髪が風に揺れるだけで。あの琥珀色の瞳が潤むだけで。さくらんぼのような紅いくちびるから紡がれる声を耳にするだけで。
こんなにも愛おしくてたまらない気持ちがあふれて…、どうしようもなくなる。
ほら今だって。
頬を赤く染めながら、潤んだ瞳で俺を見上げてくる。
………!
またドクンと胸が跳ねた。