第17章 壁外調査
まっすぐに俺を見上げてくる瞳は、まるで星屑がまたたくように揺らめいている。
自身の気持ちに気づいてしまった以上、マヤの潤んでいる瞳も、薔薇色に染まる頬も、何か言いたげにほんの少しひらいているくちびるも…。そこに特別な意味があるのではないかと…。
だが、そんなことがある訳がない。
大体ひとまわりも年下で、つい最近までろくに話したこともなかったんだ。
マヤにとって俺は兵士長。
他の兵士同様に守ってやると約束した、ただの上司。
……だから、これからも兵士長として守ってやることしかできねぇ。
早くマヤから目を逸らさないと。
このままでは気持ちを制御できなくなってしまう。
絡み合った視線のせいで酒に酔ったような気分だ。心臓がうるさいほど高鳴っているし、唯一つながっている両手は溶けてしまいそうに熱い。
マヤが眠っている間に月に祈るなんて柄にもないことをしてみたが、実際に祈りが通じたのかマヤが目覚めたならば、こんなにも。心も身体も普段の自分からは考えられないような反応をしてしまっている。
目を逸らそうと思っているのに、琥珀の瞳に吸いこまれるように魅入られて身動きできない。
もう少しこのまま…。
その想いのまま、絡み合った視線のまま。
自然と漏れる、切なく、互いにささやくように。
「……マヤ…」「……兵長…」
と、そのとき。
「マヤ~! 気がついたんだね!」
けたたましい叫び声が響いた。
振り返ると、ハンジが扉からひょっこり顔を覗かせている。