第17章 壁外調査
かたかたと小刻みに震えているマヤ。
ぎゅっと目を閉じ、琥珀の瞳は隠れてしまっている。兵長と確かに呼んでくれたくちびるも、わなわなと震えている。
きっと思い出したんだ。巨人に食われそうになったことを。
ようやく長い眠りから目覚めたばかりだというのに、残酷な事実を思い出させるのは可哀想なことをしたと思わないでもないが。
調査兵である以上、現実から目を背ける訳にはいかない。
こうやって意識を取り戻して、身体も問題がなければ再び、壁外であのおぞましい巨人と戦わなければならない。
お前の恐怖は俺が取り除いてやる。
「もう大丈夫だ」
マヤの左手を包む両手に、ぐっと力をこめた。
「マヤ、お前を食おうとした巨人は俺が倒した。これからも必ず俺が倒してやる。何も怖くない。大丈夫だ」
……そうだ。必ず俺が守ってやる。だからもう震えないでくれ。恐怖に負けるんじゃねぇ。
「……これからも…?」
「あぁ そうだ。だから怖がらなくていい。震えなくていい」
マヤとつながっている手が、熱い。
「……だから目を開けて、俺を見ろ」
その琥珀の瞳で、もう一度俺を見上げてくれ。
この先何度お前が危険な目に遭っても、今回同様に必ず助けに行く。倒れて意識を失っても、大怪我をしても、どんな状態になろうと必ずそばにいる。その瞳が俺を見上げるまで、何度でも。
強い想いを青灰色の瞳にこめて、まっすぐにマヤを見つめながら。
きっと伝わる。きっと信じてくれる、この心を。
マヤのまぶたがゆっくりとひらいた。
「……兵長…」
再び逢えた瞳を二度と逃さない想いをこめて、絡め取る。
「……マヤ…」
視線が絡み、呼び合う名が特別な意味を持つ。
胸が、苦しくなった。