第17章 壁外調査
両手の中のマヤの左手の体温が少しずつ上がっていく。覚醒を確信し、心がはやる。
……マヤ! 起きるのか? その目を開けてくれるのか…?
閉じられたまぶたがひらき、琥珀色の瞳がのぞくのを今か今かと待ち焦がれる。
ぴく…。
マヤのまぶたが痙攣する。
薄く… 薄く、まぶたがひらく。
かすかにのぞく琥珀色の瞳。その色を目にしただけで、ドクンと心臓が跳ねる。
意識の覚醒とともにマヤは長いまつ毛を震わせながら、ぱちぱちとゆっくりまばたきをした。
大きな琥珀の瞳を縁取る繊細なまつ毛が、音もなく上下に揺らめく。ランプの灯りを受けて艶やかに光るそれは、ずっと待ちわびた瞬間が訪れたことを教えてくれる。
……あぁ、やっと逢えた…。
リヴァイはなぜかそう強く感じて安堵した。
「……へい… ちょう…」
まだ弱々しいが、マヤの澄んだ声。
「気がついたか?」
……みっともねぇ、俺の声はきっと震えている。
「わた… し…、どうして…?」
マヤに気づかれないように平静を装いながら答える。
「巨人の腕ごと落ちて意識を失っていたんだ」
マヤが意識を取り戻した。
俺の目の前でずっと伏せられていた長いまつ毛が、まるで鳥の羽ばたきのようにまばたいて。琥珀の瞳が光と潤いを取り戻した瞬間、心臓が跳ね全身の血流が一気に駆け巡るような、熱く激しい何かが湧き上がった。
先ほどまでぴくりとも動かずひんやりと冷たかった小さな手が、今は確実に己の手の中で生気を取り戻している。
どれほどこの瞬間を待ち望んでいたか。
一時はもう戻らないのではないか… などという考えがよぎり、得体の知れない恐怖につきまとわれもしたが。
リヴァイは自身の想いに少しの間ひたっていたが、すぐに気づいた。目覚めたばかりのマヤが震えている。