第17章 壁外調査
……もしもこのまま、マヤが意識を取り戻さなければ…。
そんな考えが浮かんでは消えていく。
そうなったとき、俺は一体どうするのだろうか。
この手を離すことができるのか。
わずかな反応を見せたマヤの左手を思わず握りしめてから、どれくらい時が経ったかわからない。
手の中で感じる少しひんやりとしたなめらかな肌ざわりは、いつだったか貴族の屋敷で見かけたバレリーナの人形を思い出す。それはクリスタルで作られていて、ふれればその透明度にふさわしい冷たさだった。
このままマヤが目覚めなければ…。
クリスタルの人形が飾り台から落下して、粉々に砕け散るイメージが唐突に浮かぶ。
途端に刺すような冷たい刺激が背すじを駆け抜けた。まるでブレードの切っ先で撫でられたように。
その背すじが寒くなるぞくりとした刺激は、心の痛みだ。
万が一にもこのまま目を覚まさなければ、俺の両手の中にあるマヤの小さな手が壊れてしまう気がして。
壊れてしまえば、砕け散れば、二度と元には戻らない。
そんな事態になったら耐えられるだろうか。
そんな思案で胸がつぶれそうな想いでいると、徐々に背すじを走る冷たい刺激が、得体の知れない恐怖となってのさばっていくのを感じた。
巨人を前にしてもこのような得体の知れない恐怖は感じたことがないのに。
今は…、マヤを失うかもしれないと想像しただけで、もはや背すじのみならず全身にまとわりつくのは、経験したことのなかった恐れ。
……そんな訳のわからねぇものには屈しねぇ!
リヴァイは頭を大きく振ると、ぐっと握った両手に力をこめた。