• テキストサイズ

【リヴァイ】比翼の鳥 初恋夢物語【進撃の巨人】

第17章 壁外調査


図書室の月夜からたった一日しか経っていないのに。浮かんでいるのは同じ月なのに。

マヤは今、月に祈ることすらできずに静かに横たわっている。

……ならば、俺が祈ろう。

祈ったことなんかない人生だった。ドブのような地下街に生まれ落ち、クソみたいな暮らしを送ってきた。

優しかった母は死に、俺の命も消えかかっていたところへ現れた不思議な男。

ヤツのおかげで生き長らえ、戦う術を知った。野郎二人の生活も悪くないと思い始めていたのに、ある日突然ヤツは消えた。

その後独りだった俺にも、家族同然の仲間ができたが…。

ニコラス・ロヴォフの依頼で入団した調査兵団で、仲間はあっけなく巨人に食われてしまった。紆余曲折を経て調査兵団にそのまま身を置くことになったが、何度も死に直面してきた。

そのたびに奪われる希望。

振り返らずに前に進むことを余儀なくされる残酷な任務。

家族を、友を、仲間を奪われ、絶望の底に落とされても、祈ったことなどなかった。

そもそも神なんぞ信じていない。

ウォール教の信者など、どう見てもイカレてやがる。

奴らの集会を覗いたことがある。

「……祈りましょう。マリア、ローゼ、シーナ… 三つの女神の健在を。我々の安泰を。……神を信じる無垢な心こそが巨人から我々を守る術であり、唯一巨人を退けられる力なのです」

……は? 祈って人類が安泰でいられるならば、いくらでも祈ってやろうじゃねぇか。

そんなことで巨人は大人しく帰ってはくれないし、仲間の生命(いのち)だって戻りやしない。

俺が今から祈るのは、ウォール教の神なんかではない。

マヤの澄んだ琥珀色の瞳に映っていた夜空に浮かぶ青白い月だ。


/ 1869ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp