第17章 壁外調査
ようやくマヤと二人きりになれた。これからは誰にも邪魔をされずに。
巨人に食われそうになっていた瞬間を目撃してからずっと、一秒たりとも振り返る余裕はなかった。
飛び、斬り、削ぎ。
横たわるマヤに駆けつけてみれば意識はなく。
今までふれることすらためらわれていた華奢な身体を抱きかかえて、取り急ぎ帰ってきた。
本部で衛生兵に診てもらっても、マヤは目を覚まさない。
……こいつは一体どうなるのか…。
あのとき感じた焦燥感。どうしても拭うことができずにハンジの反対を押しきって俺の部屋に連れてきた。
何故そんな行動を取ったのか、自分でもよくわからない。
ただ…、そうしないと後悔する気がした。
こいつは俺が守ると約束した。
捕らわれていた巨人の手からは確かに救出した。
……でも、それだけじゃねぇだろ。
意識が回復して、あの笑顔をもう一度見ることができてこそ、守ったことになるんだ。
俺の手で必ず、マヤの笑顔を…、あの琥珀色の瞳を取り戻してやる。
その想いだけが強く、あのときの俺を動かした。
まわりのやつの目なんか関係なかった。
ハンジが立ちふさがったのは当然だ。そんなことはわかっている。今まで一体何人もの仲間が俺たちの手の中で死んでいったか。その死にかけていた仲間の誰ひとりとして特別扱いをした覚えはない。
なのに今日は何故俺がつき添わなければ…、目覚めるまでそばにいてやらなければ…、と強く感じるのだろう。
この先マヤの容体がどうなるかなんて誰にもわからない。
何が正解かも、どの方法が近道かも見えてこない。
ならば悔いが残らないように選ぶだけだ。
……だから俺は、こいつが… マヤが目覚めるまで、決してそばを離れねぇ…。