第17章 壁外調査
さかのぼること数分。
ザクリッ!
「ガウァギアァァァ!」
もう何回削いだだろう?
今のところ、ハンジの “巨人足止め(というより足斬り)作戦” は順調で、確かにこの場に釘づけすることができている。
だが…。
マヤは一抹の不安を感じていた。
シュウゥゥゥゥ! シュウゥゥゥゥ!
足首を削ぎ落とし、巨人が叫び声を上げ、蒸気を上げて傷口の修復が始まる。そしてまた足首を削ぎ落とし…。
こんなに簡単なはずがない。
簡単ならば、今まで散っていった仲間は何故この方法を取らなかった?
……単独行動の巨人だから?
いや、たった一体相手の討伐ですら今までに何人もの命が失われている。
……この巨人が特殊なの?
確かにアキレス腱を斬られても、倒れて呻くだけでその他の行動を起こさない。
……不気味。
マヤはそう感じ、巨人の脚から上半身へ目を向けた。
斬り落とした傷口の修復の進み具合を見逃さないために、そこだけに意識を集中していたが、それは危険だと何かが知らせたのだ。
予感? 本能? いわゆる虫の知らせ?
何かはわからないし、今それを考えている余裕もない。
ただこのある意味単調なおぞましい作業から、目を背けたかったのかもしれない。
ザクリッ!
「ゴウァギアァァァァ!」
「ごめんよぉ! 君の痛みは決して無駄にはしないから!」
ハンジがそう叫んだときに巨人の肩や背中の筋肉が、ひくひくと反応しているのをマヤは見逃さなかった。
三角筋に僧帽筋… それに広背筋が今にも爆発的に動きそうに力を溜めている…?
……はっ! もしかして…!?
マヤは頭に浮かんだその考えを叫んでいた。
「ハンジさん! 巨人が身体を回転させるかも!!」