第17章 壁外調査
「ハンジさ…」
上げた声を思わずのみこんでしまった。
ハンジが巨人の足を斬りつけながら、号泣していた。
ザクリッ!
「ガウァウアァァァ!」
「うっううっっ! ごめんねぇ!! 痛いよね!!」
シュウゥゥゥゥ!
斬りつけても斬りつけても蒸気を上げながら修復する巨人の肉体。
それを容赦なくハンジは削ぎ、巨人の絶叫は地鳴りのように響き、それに呼応してハンジも泣き叫んでいた。
地獄絵図のような光景にマヤは一瞬ひるんでしまったが、すぐに頭をぶんぶんと振ってハンジの隣に駆けつけた。
「ハンジさん!」
泣きはらした顔をマヤに向け、ハンジは叫ぶ。
「マヤ~! この子が~! この子が痛がってるが! 斬れ!」
「はい! 泣かないで、ハンジさん!」
「この子がこんなにも痛がってるんだ! これが泣かずにいられるか!」
と滝のように涙を流しながら、また足を切断した。
ザクリッ!
「ガウァギアァァァ!」
シュウゥゥゥゥ! シュウゥゥゥゥ!
「マヤ! 頼んだよ! モブリットたちが来るまで持ち堪えるんだ!」
「はい!」
ザクリッ!
「グウァギアァァァガァ!」
そのころ、村に帰還途中だったリヴァイ班一行は。
「なぁ、今日の晩メシはなんだ?」
オルオがペトラに訊く。
「さぁ? 基本、野戦糧食でしょ? そんなことも忘れたの、馬鹿!」
「んなことはわかってるよ! でもよ、ほら前の街では大量の缶詰が見つかって持ち帰っても良かったじゃん」
「あれは食料品店がそっくりそのまま残ってたからね。そういつも物事がうまくいくとは限らないよ!」
「夢を見るくらい、いいじゃねぇかよ! あ~ 腹減っグアッ… ガリッ! 」
「馬の上でぺらぺらと余計なおしゃべりしてたら、舌も噛む…」
あきれたペトラがそう苦言を呈しかけたとき。
ドォォォォォ!
前方の夕空を、赤い信煙弾が切り裂いた。