第17章 壁外調査
「そんな大げさなものじゃないですけど、手入れのやり方をざっと教えました」
立ち上がったハンジはマヤの方を振り向き、両肩に手を置いた。
「すごいよ! 兵団の厩舎と違って徹底的に手入れのできない状況で、考え得る限りの手段を講じて最善の結果を導いている。それを新兵に伝授できているマヤはホントにすごいよ! 天才だよ!」
「えっ、いえ…、そんな褒められるほどすごくないですけど…」
両肩を揺さぶられ、聞いていて恥ずかしいほどの大仰な言葉で誉めそやされ…。マヤは顔を赤くしながら否定する。
「いいや! すごいよ! マヤの馬への愛と情熱がそのまま可愛い後輩…」
ハンジがさらに熱烈な賛辞を浴びせかけようとしたそのとき、見張りをしていた兵士の声があたりすべてを一瞬で支配した。
「巨人だ!」
弾かれたようにハンジは声の主を振り返った。
「距離は!?」
望遠鏡を覗きながら見張りの兵士も叫び返した。
「……およそ2000! 6~7メートル級が一体、こっちに来ます!」
「一体だけ? 単独で間違いない?」
「はい! 今のところ一体しか確認できません!」
「よし! マヤ、ミケは!?」
「本部です!」
「ニファ! 本部に行ってモブリットとミケに捕獲網を持って追いかけるように伝えてくれ! ケイジとアーベルも探して!」
「了解です!」
ニファは矢のような速さで駆け出していった。
マヤはある単語に度肝を抜かれる。
「ハンジさん! 捕獲網って!? まさか捕まえる気じゃ!?」