第17章 壁外調査
マヤがペルセウスの状態に満足し、次にその隣に立っているハンジの馬のプロメテウスの様子を見ようとしたとき、声をかけられた。
「マヤ!」
振り返ると白い歯を見せてにかっと笑うハンジと、にっこりと微笑むニファが立っていた。
「ハンジさん! ニファさん!」
「宿営準備も整ったし、暇だから相棒の様子を見にきたよ」
「……暇?」
同じ分隊長でもミケ分隊長は任務が終わったあとも本部に報告に行ったり、部屋の割り当てを聞いたりと忙しそうだけど? と内心マヤは思いながら訊く。
ハンジの代わりにニファが苦笑いしながら答えた。
「ほんとはね、本部に行かなきゃならないんだけど。ハンジさん、全部モブリットさんに丸投げしちゃってね」
「……なるほど」
モブリットに押しつけているハンジの様子が、ありありと目に浮かぶ。
「モブリットさんも大変ですね…」
「そうなのよ~。でも案外喜んでる可能性も否定できないかな?」
「あはは…」
ニファとマヤの会話など何処吹く風の様子で、ハンジはプロメテウスに近寄りポケットから出した小さな角砂糖を与える。
「やぁプロメテウス! 調子はどう?」
ブヒブヒと鼻を鳴らしながら、嬉しそうに角砂糖を食べるプロメテウス。
「うん? なんだい? ……随分とご機嫌だねぇ!」
プロメテウスの首すじを軽く撫でながら、ハンジも嬉しそうだ。
「マヤが世話してくれたのかい?」
「あっ いえ、ギータです。新兵の…」
「ふぅん、ギータね…」
つぶやきながら突然しゃがんだハンジは、前脚のひづめを持ち上げた。
「丁寧に手入れされてるね。マヤがギータに技を仕込んだのかい?」