第17章 壁外調査
アポロンの美しさに見惚れていると、ミケの声が響いた。
「集合!」
条件反射でマヤは立ち上がると、声のもとへ駆け寄る。
「皆、手入れは終わったか?」
「「「はい!」」」
「よし、では俺は本部に報告に行く。そこで部屋の割り当てを聞いてくる。夜間の見張りの割り振りも含め、また後刻あらためて通達する。それまで暫時休憩、解散!」
村の中央にある本部が設置された一番大きな屋敷に向かうミケ分隊長を見送ったあとマヤは、馬たちを見回ることにした。
……ここを離れる前に、最終チェックをしようっと。
壁外調査でもっとも重要なのは馬と言っても過言ではない。
馬がいなければ壁外を出ることすらかなわない。出陣した壁外で巨人から逃げきることができるのも馬がいてこそだ。
馬たちの状態が万全かどうか可能な限りいつも、気をつけなければ。
その強い想いで全頭の様子を見てまわる。
どの馬も今しがた班員の手入れを受けたばかりで、すこぶる調子は良さそうだ。
……良かった、みんな大丈夫そうね。
マヤはひとりでに笑顔になりながら、次々と馬たちの様子を見ていく。
ブルブルッ、ブルルン。
ハンジ班の馬たちのところにやってきた。
「ペルセウス、調子はどう? あなたの面倒を見たのは…、ギータだったわね」
そう声をかけながら、モブリットの馬ペルセウスの表情をじっと観察する。
そのやわらかそうな耳はリラックスした様子で軽く左右にひらいている。つぶらな瞳は潤いに満ちてマヤをまっすぐと見つめ返している。もぐもぐと噛むように動かしている口元を見たマヤは安心した。
馬がこのようにくちゃくちゃと口を動かしたり舌を出したりするのは、チューイングと呼ばれる仕草だ。リラックスして安心したり、人の命令にも納得しているという馬からの合図なのだ。
「ふふ、ギータのお世話の腕もなかなかのものね」