第17章 壁外調査
「いや、マヤが謝ることなんか全然ないよ! なんでもいちゃもんつけるんだよ、あの酔っぱらいは…。ところで…」
ナナバは腰に手を当て、新兵二人の方に体を向ける。
「ジョニーとダニエル!」
「「は、はい!」」
直立不動の姿勢を取る二人。
「……まさかとは思うが、ゲルガーの言うように変な目でマヤを見てたんじゃないだろうね?」
「と、とんでもないです!」「見てないっす!」
だらだらと顔から汗を流している二人を見ながら “ふーん” と言うと、ナナバはにやりと笑った。
「わかった。その言葉を信じよう。これからもしっかりとマヤの指示を聞いて任務に励むんだよ」
「「了解です!」」
「よし! じゃあマヤ、また夜にでも時間があったらしゃべろう」
「はい!」
ナナバの誘いに嬉しそうに笑うと、マヤは後輩二人をうながした。
「ジョニー、ダニエル。行くわよ」
「「はい」」
三人はナナバに頭を下げると、農具小屋へ向かった。村の西の外れに建つ農具小屋は想像していたものより大きく立派だった。
ナナバの言っていたとおりに、この村は広大な小麦畑のおかげで豊かな暮らしをしていたらしい。
農具小屋よりさらに外側の敷地… 村内と小麦畑の間には、大きな小屋が幾つも建っている。それは収穫した小麦を保管、乾燥するためのものであったり、粉挽き小屋だ。
物資の配備を任された第三分隊の兵士が、荷馬車の積み荷を次々とその小屋に運び入れているのが見えた。
「……小屋がたくさんあるから、私たちはおうちの中で休めるのね。助かるわね」
マヤが後輩の二人に言うというよりは、独り言のようにつぶやいた。