第16章 前夜は月夜の図書室で
ハンジのウィンクにたじたじとなりながら、マヤはもう一点気にかかっていることを訊く。
「この装置… 対特定目標拘束兵器(仮)の最後の “かっこかり” ってなんですか?」
「名前が仮称だからだよ。なんかこうインパクトのある名前がいいと思ってるんだけどね! 今ある候補としては “15m級だってお茶の子さいさい究極捕獲装置(仮)” “バーンシュルシュル滾るぜドッカン拘束装置(仮)”、そして “対特定目標拘束兵器(仮)”。私とモブリットで案を出したんだけど、誰がどの名前の発案者かわかるかい?」
迷わず即答。
「対特定目標拘束兵器(仮)がモブリットさんで、あとはハンジさんです」
「よくわかったねぇ! でさ、マヤはどれがいいと思う?」
きらきらした目をして答えを待っているハンジに申し訳なく思いながら。
「えっと…、資金をより多く引き出すには、個性的な名前より実直でシンプルな名前の方が…。だからモブリットさんの “対特定目標拘束兵器(仮)” がいいと思います…」
ハンジの心情をおもんぱかって微妙な顔をしているモブリット。
「………」
うつむき肩をふるふると震わせているハンジ。マヤは真っ正直に意見を言いすぎたのかと心配になってきた。
「……さ、さ、さす…」
「あ、あの… ハンジさん…?」
「さすがマヤ! 資金調達の観点から名称を選ぶなんて!」
がばっと顔を上げたハンジの目尻からは涙があふれそうになっている。
「へ? あ、そうです… か?」
「うん、そうだよ! そうだね一番大事なのは資金を確保して装置を完成させて15m級であろうが巨人を生け捕りにすることなんだ! それを私はインパクトのある名前とか何を血迷っていたんだろうか」