第16章 前夜は月夜の図書室で
マヤの質問にハンジは腕を組みながら答えた。
「今のところは一つの樽につき一つのトリガーを接続して、引けば樽の中のすべての鉄の筒から一斉発射できるように調整中なんだ」
「……そうですか…」
腑に落ちないような様子のマヤにモブリットが訊く。
「どうした?」
「技術的なことはよくわからないですけど、でも… 一つのトリガーで発射だと勢いが分散されてしまう気がして…」
「そうだな。その点は俺も気になってる。ウィリスさんと…、あ、分隊長の技術班の友人…な、起爆装置でやってみるかと話してるところなんだ」
「起爆装置なら大量の射出でも十分な勢いを保てそうですね」
マヤの言葉にモブリットも同意する。
「そうなんだ。ただ、点火の加減で下手したらこの装置自体が爆発してしまう。最大の効果を狙いつつ安全と確実性は保持したい。そのバランスが難しいんだ」
ハンジがあとを引き継ぐ。
「それに起爆装置をこれ専用に開発するとなると多額の資金が必要になる。そこもネックになっているんだ」
「あ、そうか…。お金がかかるんですもんね」
資金面のことは頭になかったマヤは、なるほどとうなずいた。
「そうそう、万年資金不足の調査兵団だからさ~、いかにうまく予算を割いてもらうかが悩みの種さ。だからもっと装置の効果や実用性に確証を得られてからエルヴィンに見せるつもりだ」
「あ! だからさっきエルヴィン団長も知らないって…」
「そういうこと!」
ハンジはパチッとウィンクをした。