第16章 前夜は月夜の図書室で
ばさっと音がして白い布がはためいた。
そして目の前に姿を現したそれは…。
……荷馬車…?
マヤはそれが普通の荷馬車に見えた。六つの樽を積んだなんの変哲もない荷馬車。
しかしよく見ると、樽の中にはぎっしりと鉄の筒が敷き詰められている。
……一体、これは…?
「これは捕獲網に代わる大型改良装置、名づけて “対特定目標拘束兵器(仮)” !」
「たいとくていもくひょうこうそくへいきかっこかり…?」
訳がわからないがハンジの迫力に押されて、おうむ返しをしてしまう。
「そう! 対特定目標拘束兵器(仮)! 今の捕獲網だと7m級までが限界なんだ。本当は4m級までが安全かつ確実に捕獲できる目安なんだ。網の直径が8mだからね。でもエルヴィンに無理を言って7m級までに引き上げてもらってる。7m級だとなんとか今の捕獲網でも色んな角度から何重にもかければ拘束可能だからね」
「はぁ…」
実際に巨人の捕獲を目撃したことのないマヤは、ハンジの語る光景を必死で頭に思い描きながら耳を傾けている。
「でも私は今すぐは無理でもいつかは、15m級の巨人の捕獲を考えている。それには今の方法では生ぬるい。手動で網をかぶせるなんてね…」
そこまで話すと、ふぅっと息を吐いた。
「そこで考案したのがこれだ。まだ開発途中なんだけど、捕獲の根本を変えようと思っている。今はこちらが巨人を追いかけアキレス腱を切って動きを封じたところを狙っているが、これからはこの対特定目標拘束兵器(仮)が待ち構えているところへおとり役が巨人を誘導し、一気に拘束に持ちこみたいんだ」
「……なるほど」