第29章 カモミールの庭で
「兵長、今度リヴァイ班のみんなでリックさんの店に行きたいです。連れてってもらえますか?」
エルドはリヴァイに頼んでみる。
「……いいだろう」
「「「やった~!」」」
大喜びのリヴァイ班をちらりと見てから、リヴァイは立ち上がった。
「お前らはもう帰れ。充分に話は聞いただろう」
「了解です」
エルドはすぐに応じて、グンタも
「風呂に行くか」
と、もう頭の中は大好きな風呂のことでいっぱいだ。
「マヤ、私たちもお風呂に…」
ペトラがマヤを大浴場に誘おうとしたが、オルオが腕をつかんで阻止した。
「帰るぞ、ペトラ」
「……なんでよ。ってか、さわらないでよ!」
「気を利かせろよ…」
ささやいたオルオの視線の行方で、ペトラも気づいた。
リヴァイが態度に出さないようにしているものの、若干苛立っているのを。
「あっ、あ~…。マヤはやっぱここに残って! また明日ね」
「ペトラ、急にどうしたの?」
風呂に誘ってくれようとしていたのに突然態度を変えたペトラにマヤは戸惑う。
そんなマヤの耳元でペトラは急いでささやいた。
「だってほら兵長が…! 早くマヤと二人きりになりたいんだって!」
「……えっ?」
「ってことで兵長、お邪魔しました。お先に失礼します! マヤ、また明日ね!」
ペトラは真っ先に談話室を出ていく。
「お疲れ様です」
「お先です」
「お疲れっす」
と、あっという間にリヴァイ班男性陣も全員出ていき、マヤはリヴァイと二人きりになってしまった。
「みんな行っちゃいましたね…」
立っていたリヴァイが、マヤの目の前のソファにどかっと座った。
逆にマヤは立ち上がる。
「あの…、私もそろそろ失礼しますね…?」
「……座れよ」
「でも…」
「いいから座れ、俺が怒鳴らねぇうちに」
「………」
マヤは言われたとおりに座ったが、内心でうろたえている。
……兵長、どうしたんだろう? 何を怒っているのかな…。