第29章 カモミールの庭で
「……了解です、すみません。ほらオルオも謝りなよ…!」
「なんで俺が。大体ペトラが…」
「私が何よ! オルオが言いがかりをつけてきたんじゃない」
一向に仲直りしそうにないペトラとオルオを瞬時に黙らせたのは、ずっと背を向けていて微動だにしなかったリヴァイだった。
「おいお前ら、いい加減にしろ」
「「すみません!」」
あんなに不協和音を奏でていた二人は、一瞬で見事なハーモニーを皆に聴かせた。
「マヤ、いいのか? 細部までこいつらにばらしちまって…?」
リヴァイの細い眉が少々心配そうに寄せられている。
「はい。私とレイさんに、“おかげですべての誤解もわだかまりも後悔も、春を迎えた雪のように溶けていきました。ありがとうございます” とリックさんが頭を下げたんです。そうしたらレイさんは “オレたちだけの力じゃねぇ、エルヴィン団長もリヴァイ兵士長もリヴァイ班のみんなも、全員が協力したおかげだ” と、イルザさんにリヴァイ班の見学をさせたところから計画だったとすべて話していましたから」
「そうか…」
マヤはエルド、グンタ、オルオとペトラを順番に見まわした。
「リックさんがリヴァイ班の皆さんにも、お店に来てほしいって言ってました。お礼に美味しい紅茶をごちそうしたいそうです」
「それは嬉しいな」
「おごり? よしっ!」
エルドもグンタも嬉しそうだ。
「マヤから話を聞いて私も行ってみたかったんだ!」
「相当美味い紅茶なんだろ? 楽しみだな」
ペトラとオルオも先ほどまでのいがみ合いが嘘のように、今にも手を取り合わんばかりに喜んでいる。