第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「確かに巨人はひどい匂いがするが…」
顔を歪めているのはミケ。
「だろ!? 動物なんだ、思想もクソもないに違いない。だから考えられるのは嗅覚、視覚、聴覚、味覚に触覚… 五感なんじゃないかな?」
「……やっぱり…」
五感の話を聞いたタゾロがぽつりとつぶやいたのを、ハンジは聞き逃さなかった。
「何がやっぱりなんだい、タゾロ?」
「マヤはハンジさんと同類だ…」
「同類…?」
「はい、マヤも似たような話をしていて…。独特の匂いとか、特殊な音を巨人が出してるとか、だから鳥は逃げるとかそういう…」
目を輝かせてマヤのかつての珍発言を並べ立てるタゾロをさえぎったのは、もっと目を輝かせているハンジだった。
「マヤ! 本当かい、タゾロの話は…? そんなことを言ったのかい?」
「えっ、まぁ、はい…、言いましたけど…」
「あぁやっぱ君は最高だよ!」
ハンジは再びマヤに抱きついた。
「私にはわかる! マヤは直感的に巨人の本質を追求することができる人材だよ。一緒に巨人を研究しよう、いいね?」
「ええ、お手伝いならいくらでもしますけど…」
「ありがとう! ついでに新薬もちょっと試しに飲んじゃったり…」
「おい、いい加減にしろ!」
リヴァイの鋭い声が飛ぶ。
「てめぇの薬は飲ませるなと言っただろうが…!」
「あぁぁ…、そうだったかな? いやそうだったね! 悪い悪い、うっかりしてたよ」
悪びれる様子もなく、ハンジは頭をかいて謝った。
「……チッ」
へらへらしているハンジと舌打ちをしたリヴァイ。その二人の様子をにやにやしながら眺めているミケに、ぼうっと立っているラドクリフ。