第28章 たちこめる霧に包まれたひとつの星
「……なるほど」
と、ギータは素直にうなずき、
「見張りはサボれないのか…」
と、ダニエルはがっかりした様子で肩を落とした。
「おいおい、サボることばかり考えてないで見張りに備えてちゃんと仮眠しろよ」
後輩の情けない態度にも目くじらを立てずに、タゾロは鷹揚に笑った。
「うぇ~、了解っす」
ダニエルの返事によしよしとうなずいてからタゾロはマヤに声をかける。
「マヤ、食べ終わったらミケさんに報告しに行くぞ」
「わかりました!」
食べかけの野戦糧食を急いで口に運ぶマヤ。
「ゆっくりでいいから。俺も今から食うし」
「はい、でも私… 食べるの遅いので」
「そうだったな」
タゾロは自身のブリキのカップに水差しから水をそそぐ。
「慌てずに水も飲めよ? 大体この… 野戦糧食は…」
取り出した野戦糧食を眺めて。
「口の中の水分を全部持ってくよな」
「……ですね。お水と一緒に食べないときついかも。そしておなかの中で何倍にもふくらむ感じ…」
同意しながら、ゆっくりと噛みしめているマヤ。
「小さくて軽くて腹もふくれる…。本当に壁外調査に持ってくるのにピッタリの食いもんだな」
タゾロの言葉に皆がうなずいている。
しばらくして全員が野戦糧食を食べ終えた。
ギータとダニエルは0時からの見張りに備えて仮眠を取るために部屋の隅に行き、ジョニーは立体機動装置の手入れを始めた。
「マヤ、行こうか」
「はい、お願いします」
タゾロとマヤは連れ立って部屋を出る。向かう先はもちろん三階にある幹部が集う部屋だ。
頑丈そうな木の扉をノックして入れば、そこには幹部の全員が勢揃いしていた。
幹部が常駐する本部になった部屋は、恐らく城主だった者の書斎。大きな机と本棚が存在感を示している。
幹部以外にも衛生兵のユージーン・ロウもいて、何やら机の上の雑草らしき植物をめぐって真剣に話していたようだが、タゾロとマヤの入室により口をつぐんでしまった。