第27章 翔ぶ
……胡散臭い笑顔をしやがって。
リヴァイは友好的な態度のレイをじろりと一瞥してから、ソファに腰をかけた。
「一時的に滞在する部屋でも好き勝手に家具を持ちこむんだな…」
「へぇ…、よくわかったな。強ぇだけの男じゃないってことか」
「一階からずっと木の床だったのにここだけやたら高そうな絨毯が敷き詰めてある。それにこの家具…」
部屋にいくつもあるデッペンチールを見まわして。
「王家御用達の家具職人のものだろうが。いくらトロスト区で最上級の宿だからといって、こんなごろごろ転がっていてたまるか」
「家具の目利きもできるってか。惚れそうだぜ、兵士長」
冗談めかして片目をつぶるレイを無視して、リヴァイはつづける。
「従者も数人いれば充分だろうに、一体何人引き連れてきたんだ。料理人までいるらしいな?」
「あぁ。馴染みの味が恋しくなるんだ、特に朝はな」
「……それで世話係の執事長まで恋しい訳だ」
「………?」
リヴァイの言葉に不思議顔のレイ。
「三日前にセバスチャンと話す機会があったんだが…」
「あぁ、聞いたぜ? なぜかトロスト区にいた兵士長と、ゆっくり会話に花を咲かせたとな」
その “会話” の内容が、自身のマヤへのプロポーズにまつわる前向きな話だと思うと、レイの表情はますます明るく華やかになる。
レイの自信たっぷりの笑顔の意味に気づいているリヴァイだったが、気にせずに逆にシニカルな笑みを返した。
「……俺はそうでもなかったが、セバスチャンが話が弾んだと思っているのなら結構なことだ。そうか、それで気持ちも高まってのアレなんだな」
リヴァイはめずらしく、はたから見てもにやりと笑っていた。
「アレ? なんだ、何が言いたい?」
「あぁ、すまねぇ。セバスチャンがな…、坊ちゃま坊ちゃまと言い出したもんでな…」
「………!」
羞恥で言葉に詰まってしまったレイ。