第27章 翔ぶ
「朝の自主訓練で飛ぼうと思って立体機動装置の使用許可申請書を提出しに行ったんだって、夕方の5時半くらいに。でも鍵がかかってて入れなかったらしいよ。まぁあの申請書ってさ、あってないようなものだし、後日出せばいいかと思ってオルオは全然気にしてなかったけどね」
「……そうなんだ」
食堂にもいない、廊下でも見かけない。
執務室には用もないのに行けないけれど、リヴァイはいつもどおりに座っているのかと漠然と考えていた。
……なのに、いないの?
「だから兵長がどんな様子だとか何も言えないんだよね。ごめんね、マヤ」
「ううん」
「でも生きてるのは間違いないから、心配ないって!」
落ちこんだ様子のマヤを慰めようと、ペトラは努めて明るい声を出した。
「……あはは、そうだね…」
「きっと忙しいんだろうね、なんか外せない用事とか任務があるんじゃない? そのうちマヤに執務を手伝ってくれって言ってくるかもよ?」
「……だったら喜んでお手伝いするけど…」
ペトラが元気づけようと言ってくれているのが痛いほどわかるので、マヤはできるかぎりの笑顔を作ったが、内心では疑問がつきない。
……執務室を空けて、どこに行ってるのかな?
お手洗いや、団長室や他のところに少しのあいだ行くだけなら、鍵はかけないはずだわ…。
リヴァイの行動が腑に落ちなくて、マヤの顔はすっかり暗くなってしまった。
「まぁまぁ、そんな顔しないで。レイさんもプロポーズしないでそのうち王都に帰っていきそうだし、兵長だって時間ができたらいつもどおりに見かけるようになるって!」
「うん、そうだね」
いつまでも落ちこんだりして、ペトラを困らせたくない。
「紅茶のお代わり、淹れてこようか?」
マヤはもう兵長の話題はやめようとばかりに立ち上がった。
「いいね! お願い」
ペトラはごろんとベッドに寝転がる。