第27章 翔ぶ
この一週間マヤはリヴァイと、なんの接点もなかった。朝と昼は食堂を利用しているが、一度も一緒になることはなかった。
そしておとといは、第一分隊とリヴァイ班の合同訓練の予定だったが直前になって中止、それぞれ別個の訓練へと変更になった。
午後の第二部の時間から夜まで兵舎を離れるマヤは、限られた時間のなかでリヴァイの姿を追い求めた。朝の食堂、午前の訓練までの移動、昼の食堂、帰舎してからの夜の廊下で。
リヴァイはどこにもいなかった。
そうなってから初めて、マヤは自覚した。
今までいかにリヴァイの姿を追っていたかを。
近くても… 遠くても… どんなときでも、当たり前のように無意識に視界に入れてしまっているリヴァイの姿を。
今はいない、気配すら感じられない。
それがこんなにも苦しいなんて知らなかった。
だから訊かずにはいられなかったのだ。
「あぁぁ、兵長ね。うん、気になるよね! ごめんごめん、もっと早く教えてあげれば良かったね」
ペトラは明るく、にかっと笑った。
「でもね、あんまり言うことはないんだよね…。実は私もほとんど見てないんだわ、この一週間… 兵長のこと」
「え?」
リヴァイ班のペトラなら毎日嫌でも訓練でリヴァイ兵長と会っているはず… との思いこみが外れる。
リヴァイのどんな様子でもいい、知りたいと焦がれての質問が肩透かしを食ってしまったマヤだったが、あきらめきれない。
だからペトラに食らいつく。
「ほとんど見てないってどういうことなの? 少しは見てるんでしょ? なんでもいいの、教えて?」
「もともと兵長は、毎回必ず訓練を指導する訳ではないんだよね…。エルドさんに任せる場合もあってさ。ミケ分隊長は違うの?」
「あぁ、時々はあるよ。タゾロさんが指揮して」
「だよね。でさ、この一週間ずっと午前も午後もエルドさんに指示を出して、兵長はどこかに行っちゃうんだ。だから姿は見るには見てるけど一瞬で言葉は交わしてないし、食堂でも一緒にならないしね。それにオルオが言ってたけど、執務室にもいなかったらしいよ!」
「えっ、どういうこと?」