第27章 翔ぶ
「そう?」
「うん。ご馳走を食べて遊んでいるような任務だけど、プロポーズされるのかされないのか…。ううん、そうじゃない…。何がどうなって終了となるのかもわからない状態で、帰ってくるのが遅かったり、誰とも相談できずにいたし…。気づいてなかったけど不安だったのかも… 私」
手を伸ばせばふれられる距離に座る親友。頭に浮かんだことを、そのまま言葉にして。
それだけで心に積もった不安が、すっと消えていく。
レイと一緒に過ごす時間は決して苦痛ではなかった。もともとレイには好感を持っているのだし、それはこの一週間で消えるどころか増えていった、それが恋愛感情ではないにしても。
そんな良好な関係の相手と美味しい食事、粋な雰囲気と会話を楽しんで、何もマイナスなことなどないと思っていた。
けれども、もっとも心を許しているペトラと顔を合わせて、なにげないおしゃべりをしただけで、こんなにも心が軽くなるなんて思ってもみなかった。
「やっぱりペトラは一番大切な友達…」
再認識した想いが、声になって。
「何よ、急に。照れるじゃない」
「ペトラのおかげで不安がどこかに飛んでいったのよ。いつまでつづくかわからない今回の任務だけれど、また明日から頑張れる」
「それは良かった。私としゃべるだけで気持ちが楽になれるんだったら、いくらでもしゃべろう!」
そう言ってペトラはサンドイッチに手を伸ばそうとする。
「それ、私の…」
「あはは、ばれた?」
もうとっくに自分のサンドイッチは食べてしまっていたペトラ。
マヤの分に手を伸ばしたのは、あわよくば… だったらしい。
「いいよ、半分こしよう!」
マヤは自身の分のサンドイッチを半分に割ると、ペトラに差し出した。
「やった!」
大喜びで受け取ったサンドイッチを頬張っているペトラを見ながら、嬉しそうに自分もぱくっと食べるマヤ。
紅茶を飲んで… ひと息つくと、あらたまって話を切り出す。
「あのね、訊きたいことがあるんだけど」
同じく紅茶を飲んで食後の満足感を堪能していたペトラは、少々驚いた様子だ。
「……何? どうしたの?」
「うん、あのね…」
もじもじと恥ずかしそうにしているが、顔を上げたときには真剣で一途な心の叫びがあふれて、どうしようもなく。
「リヴァイ兵長は… どうしてる?」