第27章 翔ぶ
「そのティーカップも兵長が “カサブランカ” で買ってくれたんだったよね?」
「うん」
マヤはリヴァイから贈られた桔梗のティーカップを、そっと持ち上げて愛おしそうに目を細めた。
「じゃあ… そのティーコゼーとティーカップで “カサブランカ” のことを思い出しまくりだね」
「そうだね。また行きたいなぁとは思ってるけど、なかなか行けないし、思い出すだけでも幸せな気分になれるよ」
「わかるわかる。お気に入りのお店なんだね、“カサブランカ” は」
ペトラはマヤの紅茶好きエピソードに優しく寄り添っていたが、ふと我に返った。
……もっと訊きたいことが他にあるじゃないの!
「ところでさ、高級ディナーや花束攻撃やカフェ巡り以外に何かないの? プロポーズ第二弾はされてない訳? 一週間も毎日会っていて何もない訳ないよね? 何か進展があったんでしょ!?」
……そうよ、デートもとい任務の内容も興味あるけど、重要なのは告白されたのかどうかってことだった!
のんびりとテーブルマナーや、買ったティーコゼーの話をしていたマヤは、急にペトラが結構な激しさでレイとの関係を訊いてきたので戸惑ってしまった。
「あっ、うん…」
手にしていた桔梗のティーカップをゆっくりとテーブルに戻すと話し始める。
「一週間一緒にトロスト区へ行ったけど、お茶して、お店をのぞいて、ごはんを食べて帰ってくるだけだったよ。レイさんはお芝居見物もしたかったみたいなんだけど、トロスト区には劇場がなくて…。王都から劇団を呼び寄せるって言うから断って…」
「げっ! なんでも王都から持ってこようとするね、レイさんは」
「そうだね…、ちょっと私たちの感覚からしたら考えられないことだけれど…。でもね、この一週間レイさんを見ていたら、それは仕方がないことなんだって思うようになった」