第27章 翔ぶ
その様子がほほえましくて、マヤの声も明るくなる。
「お待たせ!」
「おなか空いた~! さぁ、食べよう!」
「うん」
マヤもベッドに腰をおろして、サンドイッチを手に取った。
「「いただきます!」」
貧乏な調査兵団の食堂のサンドイッチゆえ、ハムの入っていない野菜だけのサンドイッチだが、二人で頬張れば美味しいことこの上ない。
よっぽどおなかが空いていたのか、夢中になって食らいついているペトラにマヤが微笑みながら訊く。
「すごい勢いだね。空腹だった?」
「もちろん! 洗濯して、マヤが言ってたのを思い出して私も部屋の掃除をちょっとやったんだ。慣れないことをやったら予想外におなかペコペコ!」
「あはっ。じゃあ食堂ですぐに食べたら良かったのに」
「それはそうなんだけどね。マヤからレイさんとの話を一刻も早く聞きたかったからさ。……で、どうなの? この一週間、どんな風に過ごしたのよ?」
「えっとね…」
マヤはサンドイッチを急いでのみこむと。
「レイさんがね、トロスト区の宿にお部屋をとって…、ううん宿を丸ごと借りててね…」
「えっ! さすがレイさんだね…」
もぐもぐと噛みながら、ペトラは目を丸くする。
「うん、もうやっぱり世界が全然違うよ。この薔薇も王都から毎日運ばせてるって…」
「えっ! 何それ! ごほっごほっ」
部屋の薔薇を見渡して、むせる。
「これ全部あの船に乗ってきたんだ…。そこまでしてくれなくてもいいのにね…」
「うん…、私も昨日聞いたんだ。びっくりしちゃって、そこまでしてくれなくてもいいって言ったんだけど、朝摘みの薔薇じゃないと意味がないって…」
「そうなんだ」
「でももらいすぎだし、やっぱりちゃんと断るよ。今まではちょっと強く断りにくかったんだけど」
「なんで?」
「レイさんね、ドレスや宝石をプレゼントすると言ってきかないの。でもそんなの、もらえないもん…。どうしても受け取らないって言ったらね、馬車で兵舎まで送ってくれた最後の別れ際に薔薇の花束を渡されてね。花くらいならもらってもいいかなって受け取ったんだけど、まさかそれから毎日もらうなんて思ってなかったよ…」
マヤも部屋の薔薇をぐるりと見渡してから、少し困った様子でペトラを見つめた。