第27章 翔ぶ
もぐもぐと芋を噛んでいると、自身をじっと見つめていたレイの顔が浮かんでくるが、ハッと我に返った。
……私は食べるのがそれでなくても遅いんだから、ぼんやりしている場合じゃないわ。
夕食に集中しなくてはとフォークを握り直したとき…。
「「「マヤ!」」」
自分の名を呼ぶ複数の、よく知った声。
嫌な予感のままに振り向けば、そこには会いたくなかった面々が勢揃いしていた。
リヴァイ班の四人、タゾロと新兵三人組、ナナバ、ニファ、ゲルガー、アーベル、ケイジのハンジ率いる第二分隊所属の五人。
「……皆さん、お揃いで…」
昼休みに勢揃いしていたメンバーと比べると、モブリットとアーチボルドがいないが、その代わりにニファとアーベルとケイジが増えているので、人数的には一名増加のさらにパワーアップといったところか。
夕食のトレイを手にした皆は、マヤに近いところからペトラをはじめとするリヴァイ班、ミケ班、ハンジの部下軍団が腰を下ろした。
「聞いたよ~! レイさんが来たんだってね」
口火を切ったのはもちろん、ちゃっかりと隣に座ったペトラだ。
「うん、びっくりしちゃった」
「だよね! 訓練を見学して、そのあとマヤが色々案内したんでしょ?」
「そうなの。……誰に聞いたの?」
「ナナバさんたち」
芋を頬張りながら、ペトラは離れた席に座っているナナバの方に目をやった。
「そう! 私らはハンジさんから。……な?」
ナナバに同意を求められたニファは、芋で口をいっぱいにしながら首を縦に大きく振った。
「第一分隊は全員、レイモンド卿が見学に現れた時点で知っているし、そのあとはもう噂が広まるのは早いからな」
タゾロが言えば、ゲルガーもつけ加えた。
「新兵たちが騒いでいたぜ? すげぇイケメンを見かけたって」
エルドも便乗する。
「俺とグンタも、そのイケメン貴族とマヤが歩いているところを遠くから見かけた」
「……そうですか…」
もうここにいる全員が知っている。
そして詳しい事情を訊こうと期待した顔で、マヤを見ている。
マヤは何を質問されても答えるしかないと覚悟を決めた。