第26章 翡翠の誘惑
「おい、それは一体どういう意味だ…」
エルヴィンが立て続けに話した内容をじっくりと考えている様子のリヴァイを無視して、会議は進行した。
「納得していない者もいるようなので決を採る。招待状には、マヤ、ペトラ、オルオの三人を出席させるが、一泊二日だと返信する。賛成の者は挙手を」
言い終えると同時にエルヴィンは、すっと右手を挙げた。つづいて早く会議室を出たいラドクリフ。
脳内で複雑な計算式の構築に取りかかっていてリヴァイの異変にまだ気づいていなかったハンジは、周囲の様子につられて挙手をした。
最後にミケが、ちらりとリヴァイの方に意味ありげな視線を投げかけながらゆっくりと手を挙げた。
「……賛成4、反対1。では先ほどの内容で私から回答しておく」
エルヴィンが解散と告げる前から、ラドクリフは立ち上がった。
「解散」
「おい、まだ終わっちゃいねぇ!」
すでに扉へ向かっていたラドクリフが立ち止まる。
「え~、終わりじゃないんで?」
まん丸な顔の中で眉毛が下がっている。困った様子でエルヴィンの顔をうかがうラドクリフ。
「いや、一旦終わりだ」
「……そうですかい。じゃあお先ですぜ?」
ラドクリフのまん丸な顔がぱっと明るくなったかと思うと、次の瞬間には会議室から消えた。図体は大きくとも、こういう場合は驚くほど素早い。
「……終わりじゃねぇと言ってるだろうが…」
どす黒い声が会議室に響いた。
「いや、終わりだ。あとは納得していないお前と私で話し合えば済む」
「うん? 何なに?」
会議室の不穏な空気にようやく気づいたハンジが割って入ってきた。
「あれ、ラドクリフがいない…。終わったんじゃないの? うん? リヴァイは何を駄々こねてんだい?」
ハンジのリヴァイに対する幼児扱いに、ミケが愉快そうにフンと鼻を鳴らした。
「そんなんじゃねぇ。俺は真っ当な話をしているだけだ。ミケ、お前はマヤが心配じゃねぇのか。壁外調査の捕獲作戦のときは心配で、わざわざ捕獲班に加入していたじゃねぇか」
マヤの直属の上司であるミケに話を振る。
「ナイルが面倒を見るなら別に…。お前の方こそ、何をそんなに気にしている? 班員のペトラとオルオがそんなに心配なのか?」