第26章 翡翠の誘惑
……兵長は不満だった…?
一体どういう内容の会議なのだろう?
気になる。すごく気になる。
でも幹部会議の内容なんか、とてもではないが気軽に訊いていいものではない。
マヤがそうやって思い悩んでいるあいだにもラドクリフの、がつがつと食べる勢いが止まらない。
みるみるうちに半分以上食べてしまってから、やっと手を止める。
「……ふぅ、とりあえずは落ち着いた」
食べることでかいたのか、それとも急いで食堂に駆けつけたときにかいたのか… 額に浮かんだ玉のような汗を拭きながら、ラドクリフはひと息ついた。
「マヤ、食べないのか? 多いんだったら俺が…」
要らないのならよこせという雰囲気をかもし出しながら、訊いてくる。
「あっ、ちょっと考え事をしていて…。食べますから!」
慌ててシチューを口にする。
「ちぇっ」
「今、舌打ちしましたよね?」
「してないぞ」
「いや、しました。そんなにおなかが空いているんだったら、お代わりをもらってくださいよ」
「そうするか」
貧乏な調査兵団の食堂では、基本的にはお代わりは禁止だ。そんなことをしたら年中空腹の兵士たちのお代わりを求める声が響き渡って、収拾がつかなくなるだろう。
だが、シチューなどの大鍋で作られたメニューは、駄目元で言ってみれば少しはもらえる場合があるのだ。
だからシチューのときにオルオやペトラが、お代わりを申し出て成功したことが、マヤの知っているだけでも数回ある。
だがマヤ自身は、お代わり経験ゼロだ。
なぜなら食べるスピードがゆっくりであるので、パンをもぐもぐと噛んでいるうちに、いつも満腹になってしまうのでお代わりはしたことがないのだ。