第26章 翡翠の誘惑
だからモブリットさんもきっと、オルオみたいに相談相手が欲しかったんだわ。
……私じゃ、あんまり役に立てないかもだけど…。
でも大好きなモブリットさんのためなら!
「モブリットさん、私は兵長のことを好きだと… やっと自覚できたくらいの… まだまだ初心者ですけど…」
兵長を好きと言葉にするだけで恥ずかしくて、言葉の勢いがなくなっていく。
「初心者?」
「はい…。恋の初心者… です…」
ますます恥ずかしい。
「あはは、それなら俺だって初心者だな」
「そうなんですか? モブリットさんもハンジさんが初めて好きになった人?」
ぱぁっとマヤの顔が明るくなる。
リヴァイが初めて好きになった人であるマヤにとって、心強い仲間ができたと嬉しくなったのだ。
「うん…、そうだな… 初めてではないけど」
「えっ!」
仲間ができたと思ったのに、次の瞬間には裏切られた気分だ。
「訓練兵団に行く前に、近所の子を好きだったんだ。でもそれだけで何かあった訳でもないし、その後は分隊長を意識するまでは一切誰にも全くなんにも感じなかったし。だから俺だって初心者だよ」
「そうですか…。じゃあ一緒ってことにしちゃいますよ?」
「あぁ、そうしてくれ」
「では…」
再びマヤの顔色が明るくなる。
「……私は同じ初心者でも、モブリットさんよりもっと経験のないひよっこですけど、お話を聞いたり、一緒に考えることならできます! だから、もし聞いてほしいことがあったら、いつでも聞きますので言ってください!」
そう言いきったマヤは、両こぶしをぐっと握りしめている。
それを目にしたモブリットは、優しく微笑んだ。
「頼もしいひよっこだね。ありがとう、何かあったら聞いてもらうことにしよう。マヤもいつでも話してくれてかまわないからな」
「はい!」
初心者同志だという連帯感を感じたマヤの声は、生き生きと馬房に響いた。