第2章 公園日和
「でもまだ昼にはちょっと早いよね。」
日々人さんが腕時計を見ながら言う。
「確かに…。」
「ま、もうちょっとこの辺ブラブラしよっか。
なんたって、散歩日和だしね。」
「はい!」
嬉しくて、顔がゆるんでしまう。
前を歩いていた日々人さんに追いつくように小走りして横にならぶ。
「そういえば、何でさっき腕相撲なんてしてたんですか?」
「あー、あれはね、リベンジマッチだったんだ。
前にもあそこでやったんだけど、前にも騙されて負けちゃって…。
だから今回こそって思ったんだけど、そしたら向いた方にゆめちゃんがいてほんと驚いた。らまた負けちゃった。」
次こそ勝つ!っと息巻く日々人さんは子供みたいで、かわいくて笑ってしまう。
そんな私を見て日々人さんも笑う。
今は冬で止まっている噴水の前のベンチに2人で腰掛ける。
「…イヴァンは俺の恩人なんだ。
一時期、俺、宇宙服が着れなくなっちゃったときがあって、苦しくて…。
そんなときにロシアに来て、手を差し伸べてくれたのがあの人だった。」
苦しそうな顔。
手を伸ばしそうになって、慌てて引っ込める。
「…今は?」
「ん?」
「今はもう大丈夫?」
「うん。もう、着れるよ。
ほんとにたくさんの人に助けられて、今がある。」
日々人さんが思い出すように空を見上げる。穏やかな顔で。
きっとたくさんの大事な人の顔を思い浮かべてるんだろう。
そんな日々人さんをじーっと見てしまう。
日々人さんが慌てた顔でパッとこっちを向く。
「あっごめん。俺ばっかしゃべってた??」
「いえ、もっと聞きたいくらい。
日々人さんは私の憧れの人だから。」
「えっ!?なんで?俺??」
日々人さんが自分を指差してビックリしている。
「私、ここに来るの、家族に、特に父にすごく反対されてて…。
確かに一人暮らしもしたことなかったし、いきなり外国に、しかも女の子1人でって、自分でもかなり無謀だなって思ってたから。
しかも子供服のお店なら日本にも沢山あるしって、行く意味あるのかわからなくなっちゃって。
でもそんなときに、日々人さんが月に行ったときの特集のテレビを偶然見て…。
ムーンジャンプした日々人さんを見て、この人はきっと、ずっと夢見てきたことを叶えた人なんだってすごく思って。
私も叶えたい。
あのときの胸の高鳴りをなかったことにしたくないって思えたんです。」
