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stride‼︎

第2章 公園日和


「人混み脱出!!
ゆめちゃんしっかり捕まってて!」
そう言うと自転車が思い切り加速する。

振り落とされそうになり、慌てて南波さんの脇腹辺りの服を掴むと、
「そこくすぐったいからもうちょい前持って。」
と手をお腹の方に引っ張られる。

わー!近い近い近い!!
顔に熱が集まる。
鼻がつきそうな位置に広い背中がある。
南波さんの匂いがする。

「ひゃー。鼻痛てぇ!!」
冷たい風に晒されて確かに鼻と耳が痛い。
きっと2人とも真っ赤だろう。
「そうですね!でも気持ちいいです!!」

ビュービュー唸る風の音に負けないようにちょっと声を張る。

自転車が速度を落とし、公園の前で止まる。
モスクワには自然豊かな大きな公園がたくさんある。

「あはは。ゆめちゃん鼻真っ赤。」
「南波さんもですよ。」
2人で笑い合う。

「そういえば今さらなんだけど、用事なかった?
どっか行く途中だったんじゃないの?」
「大丈夫です!買い出しに行こうとしてただけなんで。
またあとで出直します。」
「仕事は今日休み?」
「はい。水曜はお店の定休日なんです。」

「そっか。あっそうだ。俺は日々人でいいよ。
なーんか呼ばれ慣れないんだよね。南波さんって。」
自転車を停めながら南波さんが言う。

「えっ?じゃ、じゃあ日々人…さん?」
「あはは。何で疑問形!」
「えっ、だって呼び慣れなくて…。」
「そう?まっどんな呼び方でもいっけど。」
「じゃあヒビチョフ…」
「こらっ!ヒビチョフはダメ。」
日々人さんが笑いながらゲンコツの真似をする。

腕を頭の後ろで組んで日々人さんが歩き出す。
日差しが葉の間から差し込んで、まだ残る雪に反射してきらきら光る。
なんか散歩日和だなぁ。と思っていると、
「なんか、今日すごく公園日和だね。」
と日々人さんが言うからビックリしてしまう。
「ん?なんでビックリしてるの?」
「同じ様な事考えてたので…。
あっ私は散歩日和だなぁって思ったんですけど。」
「はは。ホントだ。」

サクサクと霜柱の道を歩く。
なんか、幸せだなぁ。

「この公園、すごくおいしいブリヌイのカフェがあるんです。」
「へぇ。詳しいね。」
「ここらへん、よく来るんで。
よかったらお昼に一緒に食べませんか?」
勇気を出して言ってみる。
「おっ!いいねぇ。」
笑顔で返してくれる。


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