第9章 バースディ
レストランは小さいけれど、中庭があり、色とりどりの花々や木々が、そこここに植えられている。
席は中庭を囲むように配してあり、それぞれが個室になっていた。
「わー、庭が綺麗!いいね。こんな風にお庭見ながら食べられるなんて。」
「気に入ってよかった。」
「すごい気に入ったよー!
ありがとう!日々人。」
料理はどれもおしゃれで、すごくおいしかった。
すべて食べ終わり、デザートを待っていると、急に部屋の電気が消えた。
すると店員さんが、小さなホールケーキと、コーヒーを持って入ってくる。
「おめでとうございます。」と一言添えて、サッとテーブルに置くと、すぐに去っていった。
部屋は蝋燭の光とかすかな外からの光だけ。
びっくりしているわたしに、日々人が「ゆめ、誕生日おめでとう。」と微笑んで言う。
「わぁ!ありがとう!すごく嬉しい!!」
「蝋燭消して。」
「うん!」
フーッと思い切り吹いて蝋燭を消す。
薔薇の砂糖菓子とフルーツ、クリームで飾られたかわいいケーキ。
真ん中のバラのところの銀色に光るものに目がいく。
それを日々人が、わたしの左手をとって薬指にはめる。
指輪はわたしにピッタリだった。
華奢な、でも真ん中にはキラキラ光る大きなダイヤモンド。
「ゆめ、ベルギーから帰ったら、俺と結婚してください。」
「えっ!?」
まさかのプロポーズに目がまんまるになってしまう。
日々人が、真剣な目で続ける。
「ずっと一緒にいてほしい。」
涙が頬をつたう。
「はい。」とそれだけやっと言う。
日々人がわたしの手をぎゅっと握る。
その手にわたしの涙が落ちる。
日々人が反対の手で涙をそっと拭ってくれる。
そして、ぎゅっとわたしを抱きしめる。
わたしも日々人の背中に手を回す。
「日々人、ありがとう。大好き。」
「うん。俺も。大好き。」
日々人が少し体を離して、わたしの顔に手を添えて、優しい優しいキスをして、もう一度抱きしめる。
「あー、もう。本当に大好き。」と言い、日々人がきつくわたしを抱きしめる。
「日々、苦しいよ…。」
「あっごめん。つい。」
日々人と目が合って笑い合う。