第9章 バースディ
寝室に戻ると、珍しく、まだ日々人がベッドでゴロゴロしている。
ちょいちょい、と手招きするから、わたしももう一度ベッドに潜り込む。
日々人が手を伸ばしてわたしを抱きよせる。
「いつもはどっちかが仕事だから、こうして朝ゆっくりできるの、いいね。」
「うん。いいね。」
日々人がゴロリと転がって、日々人の上に乗る格好になったから、サラリとわたしの髪が流れて、日々人の頬をくすぐる。
「くすぐったい。」と日々人が目を細めて笑うから、わたしも笑って髪を耳にかけて、日々人に優しくキスをする。
日々人も顔を傾けてそれに応えてくれる。
日々人の手がわたしの頬を、耳を、首筋を彷徨い、だんだんキスが深くなっていく。
息がすっかり上がる頃、薄く目を開けると、日々人と目が合う。
「なんか、こんな明るいのにこんなことして、悪いことしてる気分。」と日々人が言うから、「じゃあやめる?」と意地悪すると、「やめない。」と、ぎゅっと抱き寄せてもう一度キスをする。
「していい?」とキスの合間に聞いてくるから、「わたしもしたい。」と答えると、日々人が微笑んで、さらにキスが深くなる。
ベッドを出る頃には、すっかり日が高くなってしまっていた。
2人でシャワーを浴びて、お腹すいたね、とキッチンに行く。
「今日は俺が作るから、ゆめはゆっくりしてていいよ。」
日々人が腕まくりしながら言う。
「えっいいよ!やるよ!」と言ったけど「誕生日でしょ。」と寝室に追いやられる。
じゃあ、用意しちゃおうと、フレンチスリーブの水玉のブラウスと、麻のブラウンのハーフパンツに着替える。
洗面に行き、お化粧して、髪の毛を後ろでゆるい三つ編みにしてると、キッチンからすごくいい匂いがしてきた。
「いい匂いー!!」と洗面所で叫ぶと、「もうちょっとでできるよー!」とキッチンから返ってきた。
このいい匂いはチーズだろうか。お腹がぐぅ、と鳴り、キッチンに急ぐ。
テーブルにはグツグツと煮えるチーズと、パン、ブロッコリー、ウインナー、ジャガイモが置かれていた。
「わー!すごい!チーズフォンデュだ!!」
「へへ、こないだテレビでやってて旨そうだったから。」
「美味しそう!!ありがとう日々人!」
「おう、食おうぜ。」
トロリとした熱々のチーズを、具材にたっぷり絡ませると、すごく美味しかった。
