第8章 迷いの先にあるもの
朝、目が覚めると頭がすごく痛い。
「いたぁ…。」
時間は朝の7時。
ガンガンする頭をかかえてリビングに行く。
日々人はすでに仕事に行ってしまっていた。
働かない頭で、昨日の記憶を辿るけど、カクテルを飲んだあとぐらいからの記憶が全くない。
出勤したらディミトリーに謝らなきゃ。
お腹が空かないからヨーグルトだけを食べようとテーブルにつくと、日々人からの手紙があった。
『今日帰ったらもう一度話そう』
短い手紙。呆れられてしまっただろうか。
勝手に怒って勝手に出て行って怒ってるかな。
でも。ちゃんと今日は言わなきゃ。
マルクとディミトリーに喝をいれてもらって目が覚めた気分だった。
甘えてた自分はもうお終い。
感情的にならずに自分の今の気持ちをちゃんと言おう。
どうしたいかなんて、きっと言われた瞬間から決まってた。
カランコロンと聞き慣れた音を立ててお店のドアを開ける。
休憩室でいつものようにコーヒーを飲みながら新聞を読んでいるディミトリーに「おはようございます。」と声をかける。
「あっおはよう。
ゆめ、顔むくんでるよ。」
ディミトリーがクスクス笑う。
「う、ですよね…。
あの、昨日は迷惑をかけてすみませんでした。」
ペコリと謝る。
「僕らは全然大丈夫だよ。マルクなんてかなり面白がってたし。
それより、迎えにきてくれた日々人にお礼言った?
かなり急いできてくれたから、帰ったらもう一回ちゃんと言っておきなよ。」
「そうだったんだ…。
朝起きたらもう仕事に言っちゃってたから知らなかった…。」
きっと、ずっと探してくれてたんだ。
「あー、もう何やってるんだろう。わたし…。」
ソファーに倒れ込む。
「帰ったらごめんと、ありがとうだね。」
「はい…。帰ったら話そうって置き手紙をしてくれてて。
ちゃんと、今日は感情的にならずに話そうと思って…。」
「そうだね。焦らなくていいよ。ゆめはまだまだ若いんだから、いっぱい失敗して学べばいいよ。」
ディミトリーはいつでも静かな海みたいに、見守って包んでくれる。
「ありがとうございます。
よーし!とりあえず今は仕事仕事!
今日もがんばるぞー!!」
「うん。今日もよろしく。」
店の前を掃除しようと外にでると空は抜けるような青空。
わたしの迷いをさらうように、柔らかな風が頬をなでていった。
