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stride‼︎

第8章 迷いの先にあるもの


家に帰ると真っ暗で、日々人はまだ帰っていなかった。
携帯を見ると、『ちょっと遅くなる』と日々人からのメール。

よし!と立ち上がりご飯を作る。
和食が食べたい!
お米を炊いて実家からもらった味噌と出汁で味噌汁を作る。
キャベツを千切りにして、トマトを添えて、生姜焼きのたれを作り、豚肉には塩胡椒と小麦粉をまぶす。
後は日々人が帰ってからお肉を焼いてタレを絡めれば完成だ。

ご飯の準備を終えて、ソファに座りベルギーで撮った写真を1枚、また1枚と見る。
やってみたい。
1年半でどれだけできるかわからないけど、絶対将来のためになるはずで。
日々人に会いたければ、何時間かかっても帰ってこればいいだけで。
大丈夫。きっと大丈夫。

そのときガチャリとドアの開く音。
日々人が帰ってきた。

「わっごはんのいい匂い。
ゆめごめん、遅くなった。」

ぎゅっと日々人に抱きつく。
「おかえり…。」
日々人がわたしの頭をポンポンと撫でる。
「うん。ただいま。」

日々人の顔を見る。
「あの、昨日は本当にごめん!!
勝手に怒って、勝手に出て行っちゃって…。」
「うん。心配した。
ここは日本じゃないし、夜の一人歩きは絶対ダメだよ。」
「うん。ごめんなさい。もうしない。」

ロシアでは、夜道を女の子1人で歩くのは危険で、現地の人でもしないのだ。

「ん、俺もごめん。キツイ言い方しちゃって。
でも、夢のためだったら絶対に行って欲しかったから。
ベルギーの話してるゆめ、すごく生き生きしてたし、また行きたいって言ってただろ。」

「うん。すごくワクワクしたの。楽しかった。
だし、自分でお店をする前に大きなところで働いてみたいって思ったの。
でも日々人と離れるのが寂しくて、嫌で…。
日々人が同じ気持ちじゃないって思って、すごく悲しかった。
そんな訳ないのに…。
いつも日々人はわたしのことちゃんと思ってくれてるのに。
ごめんね。」

日々人が優しい目でわたしを見下ろす。
「行ってこいよ。
俺は、1年でも2年でもいつまでも待ってるから。」
「…うん。行ってくる。」
ポロリと涙がこぼれる。
「絶対成長して帰ってくるから、待っててね。」

日々人の指がわたしの涙をすくう。
「泣き虫。」
ふっと日々人が笑う。
わたしもつられて笑ってしまう。

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