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stride‼︎

第8章 迷いの先にあるもの


静かに飲みながら聞いていたディミトリーが話しだす。
「ゆめは日々人に答えを求めてるけど、それはダメなんじゃない?
日々人がゆめを大事に思ってるのはわかってるんでしょ?
彼を苦しめたらダメだよ。
これはゆめが1人で決めなきゃ。
ゆめがどうしたいのか、この先どうなりたいのか、1人でもう一度よく考えてごらん。」

ディミトリーの言葉はいつもわたしの中にするんと入ってくる。

わたしがどうなりたいか。何のためにロシアに来たのか。
日々人に、周りに甘えてばかりで見えなくなってしまってた。

ディミトリーを見ると優しく笑ってる。
「ブトンでの仕事はきっとゆめの肥やしになる、と僕は思うよ。」

「まぁ、今日は飲めよ。」
マルクがいつの間に頼んだのか、フルーツがいっぱい入った可愛いカクテルをわたしの前に置いてくれる。
口は悪いけど、結局いつも優しいのだ。
カクテルはすごくおいしかった。
ごくごく飲み干すと、頭がグルグルと回りだして、争いようのない眠気に襲われる。

「みんななんでそんな優しいの?
わたしももっと、大人になりた…の……。」

「100年はえーよ。」とマルクの声が遠くで聞こえる。


「…ほんとに弱えーのな。」
机に突っ伏して眠るゆめを見下ろしてマルクが言う。
「だから言ったのに…。」
とゆめにコートをかけながら、ディミトリーが呆れてため息をつく。

「さて、と、じゃあ王子様に迎えにきてもらおう。」

日々人の番号を探してかけると、すぐに息を切らして飛んできた。

「ごめんね。ゆめを道で拾って、一緒に飲んでたらつぶれちゃったんだ。」
「いえ、ディミトリーたちと一緒でよかったです。
あっはじめまして。日々人です。」
「マルクだよ。」
お互い話には聞いていたけど会うのは初めての2人が軽く握手をかわす。

テーブルで眠るゆめの顔は涙で濡れていた。
少し話してから、お金をおいて先に店を出る。
ゆめを負ぶって夜道を歩く。

「…ひび…と…。」
微かな声でゆめが呟いた。
起きたのかと顔を覗くけれど寝言みたいだ。
夢でまで自分を呼んでくれるゆめが愛おしい。

「離れたくないに決まってんだろ…。」
誰に届くでもない呟きが夜の闇に吸い込まれる。

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