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stride‼︎

第8章 迷いの先にあるもの


「産休に入る人の代理だから期間は一年半なんだけど。
行くか迷ってて。」
「すごい機会じゃん!行っといでよ!」

「そんなに簡単に言わないでよ!!」
ポロリと涙が目からこぼれる。
「ゆめ??」
日々人がびっくりした顔でわたしを見る。
「1年半も会えなくなるんだよ!!
日々人は寂しくないの?」

ボロボロと涙が後から後から溢れてくる。

日々人を見ると、ちょっと困った顔をして、でも「それでも俺は行くべきだと思う。」と強く言った。

「日々人のバカ!!」

お風呂上がりで上下スウェットだったけど、構わずコートだけ着て家を飛び出す。

ポロポロと涙が止まらない。
大きな通りの広場まで来て、もう走れなくなり近くにあったベンチに座り込む。

そのとき「ゆめ?」と話しかけられる。
上を向くとディミトリーが恋人のマルクと一緒に立っていた。
「うわっなんだよゆめ!すげー顔にすげー格好!!」
マルクがいつもの軽口をたたきゲラゲラと笑う。
「もーうるさいなぁ!」と返してゴシゴシと顔を乱暴に手で拭く。

「どうしたの?日々人と喧嘩でもした?」
ディミトリーが心配そうに聞いてくる。
「喧嘩って言うか…、勝手に怒って勝手に飛び出してきちゃいました…。」
「ベルギーの話で?
とりあえずこんなとこにいたら風邪引いちゃうし、どっかお店入ろうか。」

近くにあったディミトリーたちの行きつけのバーに入る。
「まぁ、飲め!!」
マルクがドンっとビールのグラスをわたしの前に置く。
「あっゆめは弱いから…。」
ディミトリーの止める声が聞こえたけど、どうにでもなれとグイーと煽る。
「あーあ。」
「潰れたらその彼氏に迎えに来させたらいいんだよ。」
ニヤリとマルクがいつの間にかわたしのコートから抜きとった携帯をブラブラとぶら下げて笑う。

酔いにまかせてお腹の中に溜まっていた言葉が溢れ出す。
「日々人のバカ!!なんで止めてくれないの!?」
ポロポロ涙がまた溢れてくる。
「寂しいのはわたしだけなの…。」

「めんどくせー女だなぁ。お前。」マルクが呆れたという風にため息をつく。

「お前のこと思ってるから言わないのに決まってるじゃん。
寂しいなんて向こうが言ったらお前、余計行けなくなるだろ。
お前は自分のことばっか考えすぎなんだよ!」

正論すぎてぐぅの音もでない。
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