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stride‼︎

第8章 迷いの先にあるもの


「期間はとりあえず1年半。もちろん強制じゃないし、すぐに返事できることじゃないと思う。
でも、僕はゆめにとって、すごくいい経験になるし、ウルイープカからゆめがいなくなっちゃうのは寂しいけど、行ってほしいと思ってるよ。」

ディミトリーは優しい顔で、わたしの返事を待ってくれている。

嬉しいし、行ってみたい。
ブトンで働けるなんて、夢みたいだ。
でも、日々人とは離れてしまう。
1年半。飛行機で12時間の距離はあまりにも遠い。

「…少し、考えてもいいですか?」
「うん。向こうも急に決められることじゃないだろうからって2週間の猶予をもらっているから、日々人とも話し合ってゆっくり考えて。」
「はい。あ…、ウルイープカは…。」
「店は、アンナがリーリアが大きくなってきて今仕事を探してるから、手伝ってもらおうと思ってる。
だから心配しないで。」
リーリアはアンナの娘で今年から小学生になる。
「決まったら教えて。」

帰りはどうやって帰ったか分からない。
気がつくとマンションの前に立っていた。
どうしたらいいかわからなかった。

でも、日々人に言ったら。
答えはわかっていた。
「行ってきて。」
きっと日々人はこう言う。わたしのために。

ポロリと涙がこぼれる。
日々人と離れたくない。

しっかり涙を拭いてから家に帰る。

「ただいま。」
「おっ、ゆめお帰り。」
日々人はリビングのソファで本を読んでいた。

わたしを見て不思議そうな顔をする。
「…ゆめ、お酒飲んだ?
なんか目が潤んでる?」

ドキリとして急いで洗面所へ向かう。
「ううん。さっき風が強くて目にゴミが入っちゃったの。
大丈夫!」

急いでシャワーを浴びて、泣いてたこともわからなくする。
日々人に言うのが怖い。
また涙が出そうになって、慌ててひっこめる。


お風呂を出ると、日々人がコーヒーを入れてくれていた。
「ありがとう。」とカップを受け取る。
「…なんかあった?」
体が固まってしまう。
「ん…。ちょっと仕事で色々あって。大丈夫。」
無理に笑顔を作る。
「大丈夫って顔じゃないけど…。
俺には話せないこと?」

うまく嘘もつけない自分が嫌になる。
日々人が心配そうな顔でわたしを見ている。

「あのね、ベルギーに来ないかって誘われたの。
わたしが好きなブトンってブランドの。」
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