第1章 出会いはいつも突然に
無事にワンピースを届けて店へと戻る。
わー!テレビで見た、南波 日々人だ!
本物の宇宙飛行士に会っちゃった!!
私は特別宇宙が好きな訳ではないが、学生の頃に偶然月に旅立った南波飛行士のことを特集した番組を見た。
若くして夢を叶え、宇宙飛行士となったカッコいい彼に憧れを抱いたのを覚えている。
カラコロと音をたてながら店に入る。
温かみのある無垢の木とアンティークのアイアンの什器を基調に作られた、優しい雰囲気の子供服のセレクトショップだ。
店の名前は『ウルイープカ』。
ロシア語で『笑顔』という意味だ。
オーナーのディミトリーは、ロシアや他の国で買い付けた服をこの店で販売している。
私の夢は、いつかディミトリーみたいに自分の店を持つこと。
そのために、彼から色々な知識を学んでいる最中だ。
「お客さん、間に合った?」
ディミトリーが見ていた書類から黒縁眼鏡をかけた優しい目をあげて話しかける。
「はい!なんとか追いつきました。
よかった〜!!」
「はは、お疲れ様。
ついでに客のいない今の間にお昼の休憩行ってきなよ。」
「ありがとうございます。
じゃあお先に行ってきます。」
カバンをスタッフルームに取りにいってから外に出る。
休憩は1時間。節約の為にお弁当を作る日もあるが、今日は間に合わなかったので、近くのカフェで済ませることにする。
ゆっくりと食事をして戻ると、店に見覚えのある人物がいた。
「「あっ!!」」
目が合いふたりで同時に叫ぶ。
「さっきはどうも、、」
「さっきの日本人の女の子!
ここで働いてたんだ。」
ディミトリーが目をまん丸にしている。
「ふたりは知り合いなの??」
「いえ、さっきそこでぶつかってしまって…。」
「ふーん、そうなんだ。
じゃあちょうどいいからゆめに接客頼んじゃおうかな。
僕はお昼行ってくるね。」
何がちょうどいいのかわからないが、ディミトリーが軽快な足取りで店を出ていく。
「えーっと、知り合いに子供が産まれて、出産祝いを探してるんだけど…。」
黙ってなり行きを見守っていた南波さんが口を開く。
「はい。予算とか決まってますか?」
接客をしながら物を決めていく。
南波さんは靴下ちっちぇーとか言いながらとても楽しそうだ。
最終的にシックな小花柄のロンパースと揃いの生地の帽子のセットに決まった。
