第3章 ハンバーグとギターとキス
「あはは、楽しいね。」
振り向いた顔が日々人にあまりにも近い。
思わず固まってしまうと、日々人がギターを壁に置いて腕に少しだけ力を込めて抱きしめるから、日々人の胸にわたしの顔がもたれるようになる。
ぎゅっと頭を抱かれる。
「ゆめのその笑顔、反則。
可愛すぎるから。」
「…日々人もだよ。
かっこよすぎて反則…。」
日々人の背に手を回して、私もそっと抱きしめ返す。
トクントクンと日々人の心臓の音が耳に響く。
愛しいってこういう感情かな、と目を閉じる。
頭のてっぺんに日々人の唇を感じて、日々人もきっと同じように感じてくれていると実感する。
でも、日々人が急に立ち上がる。
「わっ。」
私はポスンとソファに倒れかかる。
「ゆめはごはん作ってくれたし、俺が洗い物するね。」
急な行動にビックリしてしまって、返事が遅れる。
「わたしやるよ!
日々人は仕事終わりでつかれてるでしょ?
休んでていいよ!」
慌てて起き上がると、すでにスポンジを持った日々人が、
「全然大丈夫!
じゃあ、ゆめはコーヒー入れてよ。
買ってきたクッキー食べよ。」と笑いながら言う。
「あっあのクッキー食べたい。
じゃあ、お言葉に甘えて…。」
と洗い物をする日々人の横で、ポットにお湯をわかしはじめる。
日々人は慣れた手つきでサクサク洗い物を終わらせてしまう。
わたしはお気に入りの馬柄のコーヒーカップにコーヒーを注ぎ、温めたミルクとお砂糖と一緒にテーブルに置く。
クッキーもガラスの器に移して持っていく。
「いただきます。」
ジャムのクッキーをひとつつまむ。
「おいしー!これ好き!」
サクッとしたバターたっぷりの生地にアプリコットジャムの甘すぎない味がすごく合っていておいしい。
「ほんと?よかった。」
日々人もクッキーを食べながら笑う。
チョコも甘すぎない少しビターな味で、すごくコーヒーに合う。
「今度お店のモデルしてくれてる子のお礼、このクッキーにする!
ほんとおいしい!」
「そんなに喜んでもらえたならよかったよ。
ゆめは食べてるときが一番幸せそう。」
日々人が机に頬杖をつきながらわたしを見る。
わたしは急に恥ずかしくなってしまう。
「ええ!そうかな!?
なんかすごい食いしん坊の子みたい!」
「あはは!いいじゃん。
いっぱい食べる子好きだよ。」
