第3章 ハンバーグとギターとキス
日々人も手伝ってくれて、小さなテーブルにごはんが並ぶ。
「おー!日本の食卓!
うまそう!
ありがとう。」
「へへ、どういたしまして。
お腹空いたね。食べよう。」
向かい合わせで座り、いただきますと手を合わせる。
恋人にごはんを作って食べるなんて初めてで、ドキドキと嬉しさが心の中でないまぜになる。
日々人がハンバーグを一口食べる。
「ん、美味い!」
「よかったぁ…。家族以外にごはん作ったことなんてないし、めっちゃ緊張したぁ。」
モリモリという言葉がピッタリな日々人の食べ方に嬉しくなる。
今日の他愛もない出来事を話しながら、あっという間に平らげてしまった日々人に食後のお茶を出す。
「あー、腹いっぱい。幸せ。」
うーんと椅子に腰かけたまま日々人が思い切り背伸びをする。
「あっ!ゆめ、ギター弾くの?」
部屋に立て掛けられたギターを見ながら日々人が聞く。
「少しだけ。
いとこのお兄ちゃんにもらって、可愛いからずっと部屋のディスプレイにしてたんだけど、やり出したら楽しくて好きな曲をたまに弾くの。
まだジャンジャーンってコード押さえるくらいしかできないんだけど…。」
手を動かして弾く真似をする。
「へー、共通点一個見っけ!
俺もギターやるよ。少し弾いてもいい?」
うん、と言うと、ソファーに座ってギターを構える。
遊ぶように弾いてるんだけど、わたしとは比べ物にならないくらい上手くて、聞き惚れてしまう。
「上手だね。ずっとやってるの?」
「うん。ガキのころからだから、結構長い。」
知ってる曲だったから口ずさむ。
すると、日々人がにっと笑って来い来いと手招きする。
どこに座ろうか少し迷って隣に座ろうとすると、腕をぐい、と引っ張られ日々人の足の間に座らされ、ギターをわたしの膝の上においてもう一度弾き始める。
わたしの顔の横から覗くように弾くから、息遣いまで聞こえて、心臓が跳ねる。
「ゆめ、歌って。」
耳元で日々人の声。
ドキドキしながら、また歌い始める。
日々人の体温に包まれながら歌っているとだんだん緊張が解けてきて、声が出るようになって楽しくなってくる。
ジャーン…と曲が終わる。