第3章 ハンバーグとギターとキス
「すげー、カラフル。」
「あはは、好きなものちょっとずつ集めてたらこんな部屋になっちゃった。
ソファーに掛けててね。お腹空いてる?」
「うん。もう腹ペコ。
あっ!これ後で2人で食べようと思って買ってきた。」
と茶色い紙袋を差し出す。
中を覗くと、ジャムやチョコのクッキー。
「わー!ありがとう。美味しそう。」
はしゃぐわたしに
「よかった。女の子が何喜ぶかよく分かんなかったから適当に買ったんだけど…。」
と笑う。
ソファに座った日々人に温かい日本茶を出す。
「あっお茶。」
「うん。実家から送ってもらったやつ。
たまに飲みたくなるんだよね。
今からハンバーグ焼くからもうちょっと待っててね。」
そう言ってキッチンに向かう。
と言ってもワンルームなのですぐそこなのだが。
ワンルームだが、ガスコンロが2つあって、キッチンが少し広いのと、ロフトがあるのがこのアパートのいいところだ。
フライパンを出し、ハンバーグに焼き目を付けてから返し、水を入れて蓋をして蒸し焼きにする。
その間に煮物に火をつけ、冷やしていたサラダを皿に盛る。
夢中で用意していると後ろから抱きしめられる。
「わっ!」と色気のない声が出てしまう。
「ゆめ、手慣れてるね。」
と言いながら首の後ろに濡れた感触があってドキドキしてしまう。
「ひっ日々人、用意、できないよ…。」
顔が熱い。
日々人はしばらく顔をわたしの肩に埋めて抱きしめていたけど、
「じゃあ、キス、して?」
と甘えた声で言う。
ゆっくり振り向くと、日々人がわたしを優しい目で見下ろしている。
恥ずかしいけど、日々人の肩に手を置いて少し背伸びして口づける。
自然に傾けられたわたしの顔を日々人の温かい手が包む。
少し唇が離れると、
「会いたかった…。」と日々人が囁く。
「わたしも…。」
そう言うと日々人の唇がもう一度降ってきてさっきより少し深く口付ける。
そのとき火にかけていた煮物の鍋がプシューっと吹きこぼれる。
「「あっ!」」
2人で同時にさけんで、笑ってしまう。
「ゴメン、やりすぎた。」
日々人が火を止めながら言う。
わたしはふきんで溢れた所を拭きながら、その言い方に赤くなってしまう。
そんなわたしを見逃さずに、日々人が頰にキスして「また後にする。」と言うからわたしはますます赤くなって日々人に笑われてしまう。
