第3章 ハンバーグとギターとキス
コトコトコトコト…。
トントントン…。
金曜の午後5時半。
少し緊張しながら包丁でキュウリを輪切りにして塩もみをする。
今日は日々人が約束通り、ハンバーグをうちに食べに来る。
朝から掃除して、食材を買いに行って、準備は万端、のはず。
ハンバーグと、何にしようか迷って、ポテトサラダと和食がいいかなと思い、実家から送ってもらった味噌でお味噌汁と、大根と鶏肉の煮物を作ることにした。
1人だと適当になるけど、日々人が食べるとなると、自然と気合が入り、何度も味見して確認する。
日々人が来るのは6時。
ポテトサラダと丸めたハンバーグを冷蔵庫に入れて洗い物をする。
「ふー。できたぁ。」
2人がけの黄色と紺のチェックのお気に入りのソファにどさりと座る。
冬でもアパート全体のセントラルヒーティングのお陰で暖かい部屋では、長袖1枚で十分なので、今日は黄色い薄手のセーターに、濃紺のデニムワイドパンツにグレーのニットのヘアバンドという格好だ。
昨日、ディミトリーに早速水曜日のことを話したら、自分のことのように喜んでくれた。
「2人を見たときに、きっとそうなるって直感でそう思ったんだ。」と、すごく嬉しそうに言っていた。
だから接客の途中の変なタイミングで2人にしてくれたらしい。
確かに2人じゃなかったら、メアドなんて渡せなかったかもしれない。
ディミトリーの気遣いに改めて感謝する。
出会いから付き合うまでがあまりにも早かったから少し不安もあったけど、ディミトリーは2人なら大丈夫だよ、と太鼓判を押してくれた。
根拠なんてないんだけど、いつでも彼が大丈夫と言う言葉は説得力があって、実際いつも大丈夫だから、わたしはいつだって彼の言葉に安心してしまう。
お茶でも飲もうと立ち上がったところでピンポーンとチャイムがなる。
日々人だ!!
一気に緊張する。
鏡で変なところがないか一瞬確認してからドアをあける。
「ごめんちょっと早く着いちゃった。」
前と同じダウンにデニムのシンプルな格好。
「ううん。全然大丈夫だよ。
寒かったでしょ。入って入って。」
冷たい空気に鼻が真っ赤になってる日々人を中に促し、上着をハンガーに掛けて、革に鮮やかな刺繍が入ったスリッパを出す。
「お邪魔します。」
日々人が部屋を見回しながら入ってくる。