第1章 春、桜のない空
そのあと、どこから来たの?と話題が変わって、東京からだというと、すごーいとキラキラした目で見られた
・・・そうかな?京都もいいところだと思うけど、静かだし
「じゃあ、あの人も東京から?もしかして二人でこっち来てんの?」
あの人とはせーくんのこと
「まあね」
そのあと一緒に住んでるんだってことがバレて、軽く殴られて
羨ましいを連呼された
「それ、あんまり他の人には言わないでね」
噂になりたくないし、恨みを買いたくもないから
「既に、私の恨みを買っていますよ」
「いやー、やめてー」
そう言って笑いながら、夕香が次に言った言葉に思わず笑顔が消える
「それで好きにならないってすごいよねー」
「そうかな」
思わず乾いた声が出てしまった
じわりとまぶたの裏に浮かぶのは、泣き腫らしたあの日。
大好きだった人が思いも伝えられないまま、いなくなった日。