• テキストサイズ

【黒バス】それはきっと涙の色【赤司】

第1章 春、桜のない空


引退したその日、あたしは全て終わったあと、一人で屋上に上がってた


テツヤくんは来なかったな

引退したのに、全然何の感情も浮かんでこないな

寂しいとも思わないな

なんでだろう、もうバスケから離れたいのかもしれない

違うか

離れたいのは、せーくんだ

もう、あんなせーくんは見たくない



「・・・好きだったよ」



せーくんが、本当に好きだった

前のせーくんが


「せーくんが大好きで、傍で笑えてただけで幸せだったんだけどなぁ・・・」


小さく小さく呟いた言葉は流れていく

涙が出てきた、息が詰まる苦しい

練習が遅くって、外が暗くなった日は、危ないからって家の前まで送ってくれたり
マネージャーの仕事が終わらないときは手伝ってくれたり

さりげなく毎日ありがとうって言ってくれたり


そういうところが本当に大好きだった


でも、あのせーくんはもういなくて、ただただ、勝つことだけが全てになってて
勝つために勝負を楽しむことすら忘れて


あのせーくんは、嫌だ


「だから、いい加減、嫌いになればいいのに」

そうだ嫌いになればいい、そうしてしまえばきっともっと楽になれる


それなのにどうしてだろう、好きだったせーくんはもういないのに、今のせーくんは嫌いなのに

心臓が痛いんだ、まだ好きなんだ
だからこんなに苦しいんだ

せーくんに会いたい、前のせーくんに会いたい




その日、一人屋上にいたあたしをせーくんは迎えに来てくれて、そのまま一緒に帰った

泣き腫らしたような赤い目についてせーくんは何も聞かなかった

わかってたんだろう、けど聞かなかった

そこに、いつかのせーくんの優しさが見えたような気もしてさらに切なくなった



そしてその日、どの高校に行くことになってもついてきてほしいといったせーくんに、
あたしはしばらく戸惑ったあと、せーくんからの命令だからと自分を納得させて、首を縦に振った



これもきっと失恋、なのにまだどこかにあの日の君がいる気がして。
/ 12ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp