第3章 洛山高校男子バスケ部
帰宅してからすぐにスマホのメッセージアプリを開くと、昼頃に連絡をしたにも関わらず授業が終わってすぐの時間帯に既に返信があった。
律儀だなぁと思いつつ、駄目だと書いてあったらどうしよう。という不安に駆られながら画面を覗いた。
" こんにちは。
応援に来てくれるの?あ。もしかして、例のモデルの件も関係してる?
その日は丁度他校と練習試合があるの。
貴女のお望みのものも見られるかもしれないし、何より私も来てほしい。
早めに体育館に来てくれたら観戦できる場所に案内してあげるから、是非お友達といらっしゃい。
…そうだ。
一回目に私に送ったあの文、申し訳ないけど凄く笑っちゃった。可愛いわ、かほちゃん。 "
「…実渕さんずるい…」
今までの口ぶりからして、彼が色んな女の子へ自然に「可愛い」と言っている事は容易く想像できるのに、まともに男の人と話せない私はこの言葉一つで舞い上がってしまう。
きっと日曜日の練習試合も実渕さんは違う一面を見せてくれる。
撮影が大丈夫だったら、沢山その姿を撮って絵にしたいな。なんて。
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実渕さんにお礼のメッセージを送った後花ちゃんにも連絡をすると、すぐに電話がかかってきて例の私の文章の反応について聞かれた。
「案の定笑われました」
「くっ…くく、だよね。あれはどんな紳士でも笑う」
楽しそうに電話越しで私をからかう花ちゃんに、こういう時には凄く楽しそうで声のトーン上がるよね。とお返しに皮肉で言ってみると、「かほが面白いから」と暴論を返され、はぁとため息をつく。
「まぁ後の話は日曜日に。ちゃんとカメラ持ってこないと損するよ」
「まだ撮って良いかも分からないし…」
カメラは持っていくけど。
「それと、蜂蜜レモンとか作ってみるのもいいかもね。美人さんだけじゃなくて、スポーツマンなら皆に配れるし」
「わ、私が作るの…?」
点で料理はしないので自身がない上に、蜂蜜もレモンも家族全員好きではないので家に置いてあることは極めて少ない。
でも、部活の差し入れには良いと風の噂では聞くし…
戸惑っていると花ちゃんはすかさず「お礼だよ、実渕さんへの」と私に言った。
「…分かった。やる」
ふふ。と嬉しそうな声だけが私の耳に届いた。