第3章 洛山高校男子バスケ部
いきなり体育館に顔を出して実渕さんの事を拝見していました。なんて言っても邪魔になってしまうかもと思い、年のために実渕さんに連絡をしようと思い画面をスワイプした私の指はあり得ないほどに震えていた。
それもそのはず、これが実渕さんへの初めての連絡なのだから。
" こんにちは。
最近実渕さんがバスケ部だと知り、是非一度見てみたいなと思い連絡をさせていただきました。
日曜日の部活、私と同級生二人で少しの間見学に伺ってもよろしいでしょうか。ご検討よろしくおねがいします。 "
「…上司にお願いでもしてんの?」
「うわぁ、!」
突然耳元で花ちゃんの声がして思わず振り返ると、当の本人は「煩い」と言うように怪訝な顔で耳を塞いでいた。
「の、覗かないでよ花ちゃん!」
「あのさ、このメッセージって例の美人さん宛てでしょ?多少は崩した書き方でいいんじゃないの…?
一周回ってふざけて見える」
そんな。という風にシンプルにショックを受けた私を横目に、ひょいっと私の手からスマホを奪って画面を操作し始めた花ちゃん。
何でもいいでしょ。そう言おうとして覗きこんだ私のスマホの画面には、いかにも可愛い女子らしい文面でお願いする様子が浮かびあがっていた。
「これでよし。…あ、そうだ。因みにさっきのかほの文面も先に送っておいたから」
「えぇ!?なんで…!花ちゃんの文章だけでいいのに」
「だって面白いし。この子真面目なんだな~って美人さんにも印象つくし?」
不服な私を面白そうに笑う花ちゃんは可愛いのに、その腹の中は常に悪い企みでいっぱいな事を改めて思い出させてくれた。
そんななんの自慢にもならない印象がついたって嬉しくないし、面白くなさそうなんて思われて疎遠になったりしたら……考えるだけで冷や汗が溢れる。
「美人さんから返事来たら、私にもすぐ教えてね。
じゃ、 また日曜日」
柄にもなく上機嫌に手を振る花ちゃんに曖昧に返事をして、行き場の無い羞恥心を遣り過ごそうと、とりあえず無反応なスマホの画面をじいっと見つめてみた。